私たちは常に物事の原因を考えます。
こんな場面では、どうでしょうか?
料理中あなたの後ろで卵が割れました。
これは一体なぜ?
誰かがわった?
風で転がった?
自分がぶつかってわれた?
基本的に出来事が起こるには、いくつかの原因が絡み合っています。
自分でぶつかってわれてしまったかもしれない卵なのに、たまたま近くにいた人のせいだと思い込んでしまったら、、、、
あせったりビビったりした時など心の調子が悪いと原因の考え方にかたよりが出やすくなっています。
何かが起こった時の原因の考え方は対人関係のよしあしにつながってきます。
今回は、対人関係の中で心の不調をまねかないためのテクニック「原因の考え方」をメタ認知トレーニングからご紹介します。
目次
原因の考え方(原因帰属)
出来事には原因がいくつも絡み合っています。
同じ出来事でも、原因が全く違う可能性があることを私たちはよく見落としています。
そのことでけんかになったり疑心暗鬼になったりし対人関係にヒビが入ってしまうこともしばしばあります。
① 自分の責任「あまり自分のことをよく思われていないんだ」
② 他の人のせい「あの人は忘れっぽいから」
③ 状況や偶然のせい「電話がこわれているのかなあ」
あなたがパッと思いついた原因は何でしたか?
何かが起こった時、ひとそれぞれ原因の考え方には特徴(帰属スタイル)があります。
ではポジティブな物事の原因の時はいかがでしょうか。
④ 自分の責任「自分の活躍が優勝につながった」
⑤ 他の人のせい「チームがうまくやってくれたから優勝につながった」
⑥ 状況や偶然のせい「たまたま運がよかったんだと思う」
物事がポジティブな時とネガティブな時の原因の考え方は同じではないかもしれません。
どの考え方がよいとか悪いとかではなく、自分の考え方の特徴を知っておくことが大切です。
なぜならば心の調子が悪くなるとその考え方の特徴が強く出やすくなってしまうからです。
心の調子が悪い時は考え方がかたよりやすい
心の調子が悪い時は原因の考え方にかたよりが出ます。
たとえば、うつ病や抑うつ状態のときは、
・失敗を自分自身のせいにしがちです。
・成功をほかの人や状況や偶然のせいにしがちです。
このような考え方のかたよりがあると、ますます自尊心が低下してしまいます。
また、妄想を持つ人は、
・嫌な出来事や失敗を他人のせいにしがちです。
・成功も失敗も自分にはどうすることもできないと考えがちです。
このような他の人を非難する考え方のかたよりがあると、人間関係で問題が起きがちです。
心の調子が悪いときは、誰もが悪い方へ進みたくないはずですが自分の考えのかたより(帰属スタイル)によってさらに悪い方へと進んでしまいやすくなっています。
このような考え方ばかりしている自分に気づいたときは、「今、悪い方へ考えやすくなっているな」と気づけるといいですね。
吹き出し 私 こんな時、心の調子が悪いんだなと自分で気づけると少し心が楽になります!
homareko
おどろいた表情と恐怖の表情はよく似ていてまちがいが多いです!
出来事について3つの原因を考えましょう
心の調子が悪い時こそ、物事の原因をいくつも考えてみましょう。
少なくとも3つの視点から原因を考えてみましょう。
たいていの場合、出来事には複数の原因があります。
できるだけ現実的になりましょう。
物事がうまくいかないことを、いつも他人を非難するのは間違っています。
同じように、いつも自分のせいにするのも間違っています。
メタ認知トレーニングを体験してみよう
病院で行われているメタ認知トレーニングでは、自分の考え方の特徴を知るトレーニングを行います。
3つの視点から原因を考える練習をし、心の調子が悪い時に自分から悪い方へ行かない練習をしています。
実際の課題は、こんな感じです。
課題1 下のトランプから1枚の絵札を心の中で選んでください。そして、それに意識を集中してください。
選んだカードを指で刺したり、名前を言ったりして、周りにわかるようにしてはいけません。
あなたが選んだカードを覚えたら次のイラストを見てみましょう。
このなかには、あなたが選んだカードがないはずです。
あなたが選んだカードはありますか? いったい何が起きたのでしょう?
超能力?魔法?
超自然的に見える奇妙な現象や状況は日常生活でもひんぱんに起こります。
たいていの場合、奇妙な出来事には単純な原因があることが多いですよね。マジックも同じです。
吹き出し 私 すべてのカードが違っていましたね。
homareko
おどろいた表情と恐怖の表情はよく似ていてまちがいが多いです!
原因をひとつにとらわれずいくつか考えてみることはとても大切です。
課題2 原因をいくつか考える練習をしてみましょう。
次の場面を考えてみてください。
あなたならこの出来事の原因をどう考えますか?
① 自分のせいと考える人は?
なになに?スピード違反?一時停止違反?違反をしちゃった⤵
看護師さん
② では、相手(この場合パトカー)のせいと考えると?
参加者
パトカーは急いでいたので、前に走っていた自分の車をとめて道を急ごうとした
③ では、何かたまたま偶然があったとしたら?
事件があったので、職務質問をしていた
看護師さん
3つの原因を組み合わせると、こんな感じになります。
後ろからパトカーが自分の車をとめたのは、 「自分が違反をしたからか(自分のせい)」と思ったけど、 「たまたま事件があって(偶然)」 「道をいそいでいた(相手のせい)」のかもしれない。
自分のせいと考えてしまいがちな場面でも、このように3つの原因をかんがえることで、少し緊張が和らぎますね。
このようにメタ認知トレーニングでは、一つの出来事を3つの視点から原因を考える練習をします。
自分の身に何か起こった時にも有効です。
原因をひとつに思い込まず、いくつかを重ねて考えるようにできると、イライラしたり落ち込んだりする心の不調をまねかなくて済みます。
対人関係で困らないために
わたしたちは、何かが起こると原因を考えます。
その時に、一つの原因のみで判断してしまうと真実がわからなくなってしまうのみではなく、そこに嫌な感情が芽生えてしまうことがあります。
対人関係のトラブルは、相手の問題もありますが、自分が変わることで防ぐことができます。
対人関係で困らないために、原因探しをいくつもしてみましょう。
視点を変えて考えることが大切です。
あせって一つの説明だけを受け入れないようにしましょう。
何かが起こった時は、いくつもの原因が絡み合って起きたんだと考えるようにしましょう。
今日のポイント
・何かが起こった時には、3つの原因をいつも考えるようにしましょう(自分のせい、相手のせい、たまたま)
・心の調子がわるいほど、ひとつの原因のせいにしたがります。
・たいていの場合は、いくつかの原因がかさなって起きています。
・原因探しがうまくなると、対人関係によるこころの不調をまねかなくて済むようになります!
語句説明
「原因帰属」…結果に対して原因を考えること
「帰属」…出来事の原因を推測すること
「帰属スタイル」…原因の考え方のスタイル
あせったり、追い詰められたりする場面では、心が穏やかでなくなるため、一つの原因のみを思い込んでしまいやすくなります。
誰かから同じ説明をうけると、さらに気持ちが固まり「やっぱりそうなんだ」と思い込みが強くなります。
しかし、かならず原因はひとつではありません。
「原因をひとつに決めつけない」ことは、誰でも使える対人関係における考え方テクニックです!
参考 メタ認知トレーニング+ ユニット4 帰属スタイル ○○のせいにしがち