今日では「共感性」とは人間力をはかる代名詞のようになっています。
相手の気持ちを勘違いしてしまうと、いらいらしたり不愉快になったりすることがたくさんあります。
今回は、対人関係に必要とされる「共感性」についてお話ししたいと思います。
「共感性」は、認知機能の世界で「心の理論」と呼ばれています。
対人トラブルに巻き込まれないためには、どんなことに気をつけていけばいいのでしょう。メタ認知トレーニングで勉強していきましょう。
目次
相手の気持ちはどこからわかる?
突然ですが問題です。
あなたは相手がどんな気持ちかをどんなことから感じ取っていますか?
それは表情?言葉?行動?
たくさんヒントはありますよね。
相手の気持ちを察知するためのヒントは他にもたくさんあります。
気持ちは目に見えるものではないので、多くのヒントから推測をするしかありません。
「共感性」とはこの推測の部分です。
どれだけ多くのヒントをキャッチするかで共感性の精度を上げることができます。
どれだけヒントをつかめるかで共感性の力がきまる
次の写真をみてください。
これは、画像の一部になります。
この写真の人が何を考え、あるいは何をしているかを当ててみてください。
あなたの答えはどれでしたか?これだけの情報ではなかなか正解に結びつけるのは難しいですね。
全体がわかると答えは簡単ですね。
ヒントを多くキャッチすることは相手の行動を理解するうえでとても大切です。
共感性がない人はヒントをキャッチしようとしないか(できないか)、少ないヒントで決めてしまうことが多く見られます。
第一印象や、自分の記憶や経験だけで物事を決めつけてしまわないようにしましょう。
相手の感情が一番よく外に出ている部分は表情です。
表情は、目、目尻、眉、眉間、肌、口角と全体から情報をキャッチしていきましょう。
一部だけでは相手の感情が正確にわかりません。
homareko
おどろいた表情と恐怖の表情はよく似ていてまちがいが多いです!
対人関係は感情と考えたこと(思考)によって生まれる行動によって成り立っています。
相手の感情と相手が考えたことがわかると「なぜそんなことをするのか」「なぜそんなことを言うのか」など相手の行動の意図がわかるようになります。
相手の行動の意図がわかると行き違いにならない行動を選択することができますね。
相手の顔の表情や身振りだけでなく、その時の状況、その人に関する知識などトータルして考えていくようにしましょう。
わからないときは、自分だけで思い込まず、その人へ率直な質問をしてしまいましょう。
詳しい情報がたくさんあると、多くのヒントが手がかりになり、より行動の意図が理解しやすくなります。
共感性の落とし穴
しっかりたくさんのヒントを察知して、相手の感情や相手が考えていることを推測したとしても、その答えが誤りやすい時があります。
次の写真をみてください。
この写真の男性を見てあなたはどう感じますか?
もし、あなたの機嫌がいい時(しあわせ)、悲しい時、不安な時(警戒している)で同じように感じるでしょうか?
感じた事はこんな感じになりませんか?
私たちは、その時の気分によって同じものを見ても(聞いても)認識や評価が変わってしまいます。
特に心の調子が悪い時は、ネガティブな感情そのものが証拠のように思ってしまうこと(感情的な証拠)があるのでトラブルになりやすいことがあります。
例えば「嫌な気分にさせられた。あの人は私のことが嫌いに違いない」と思ってしまった場合のことを考えてみましょう。
この場合、自分の感情=嫌な気分が証拠となって、相手が自分のことを嫌いであると決めつけてしまっています。
相手の気持ちは、本当にその通りでしょうか?
あなたに嫌な気分をもたらしてしまったとしても、相手はあなたが嫌いで言ったわけではないかもしれません。
homareko
相手の気持ちを自分の気分だけで決めつけないようにするコツは次の通りです
他の人のふるまいでイライラしたり、ストレスを感じたりしたときは、その人がなぜそんなことをするのか(したのか)を少なくとも2つの説明を考える習慣を身につけていくとよいと思います。
こんな感じでいくつかの理由の説明を推測していきましょう。
自分の気分や気持ち以外でも、次のような原因があると簡単に相手の気持ちや行動の意図の判断を誤ってしまうことがあるので注意しましょう。
判断を誤る原因の例
・ストレスがあると、些細なことが大変なことのように感じやすくなります。
・不眠、薬、コーヒーなどは、体調の悪さの理由が自分の責任と考えにくくします。
・嫌いな音楽、騒音は、イライラしやすくなり間違いがうまれやすくなります。
相手が「なぜそんなことしたのか」の判断をするときは、情報をたくさん集め自分の気分や状況を加味して考えるようにしていくと、対人関係のトラブルでイライラすることを避けることができますね。
メタ認知トレーニングを体験してみよう
病院で行われているメタ認知トレーニングでは、共感性を上げるトレーニングを行います。
表情から相手の感情を判断する練習や相手の行動の意図をいろいろと考える練習をします。
実際の課題は、こんな感じです。
課題1 次の3人の男性のうち、運動選手、心理学者、連続殺人犯は誰でしょう。
答えはこちらです。
私たちは外見だけでその人の身分や職業を当てることは難しいです。
その為、相手をもっと深く理解していくことが必要です。
homareko
このトレーニングで表情や身振りだけでは判断が難しいことを学びます。
課題2 次の場面をみて、犬を散歩させている男性はどう考えるでしょう。
はっきりとした答えをだすために必要とされるのはどんな情報でしょうか?
犬を散歩させている男性はどう考えるでしょうか?
おそらく、「泥棒だ」と思う
看護師さん
参加者
ありそうもないけれど、「カギを忘れたので、窓をよじ登ってカギを取ろうとしている」と思う
色々と想像をかきたたれますよね?
答えを出すために必要なことは、相手のものの見方も考えてみることです。
相手がどのような状況であったのかという情報を推測していく必要があります。
この場合、自分が見た場面の前の状況はどうだったのかという情報が必要ですね。
こんな状況でした。4コマ漫画の1~3を見てみましょう。
目撃したのは、カギを忘れたので家の中に取りに行っている場面でした。
見たままだけを自分の思い込みで判断すると間違えてしまいますね。
看護師さん
homareko
相手の状況がどうだったのかという情報があると正確に判断ができますね。
このようにメタ認知トレーニングでは、いろいろな情報を集めて、相手の気持ちや行動の意図の推測をいくつも考えていくトレーニングし共感性の力をあげていきます。
対人関係で困らないために
全ての人が同じ知識をもっていたり、同じように感じたりするわけではありません。
そのために誤解やトラブルがうまれてしまうことがあります。
対人関係のトラブルは相手の問題もありますが、自分が変わることで防ぐことができます。
対人関係に困らないためには、共感性の精度をあげていきましょう。
共感性の精度をあげるには、情報をたくさんあつめること、情報に対する判断を決めつけないことが大切です。
共感性の精度をあげるポイントは次のとおりです。
共感性の精度をあげるポイント
・顔の表情や身振りは、とても重要な手がかりだが、判断を誤ることがある。
・判断する前に相手に関する知識、置かれている状況の情報をキャッチしよう。
・自分のことが他の人と同じとはかぎらない。自分の見方が相手の見方と違うことがある。
・自分の気分やこころの状態の調子が悪いときは注意。心が狭くなっているので相手の気持ちをネガティブにとらえすぎてしまう(実際はそうではない時も多い)
homareko
共感性の精度をあげれば、対人関係トラブルは自分の考え方で防ぐことができます!
今日のポイント
・対人関係に困らないためには共感性の精度をあげることが必要
・共感性の精度はどれだけ情報を集めるかにかかっている
・表情は一部だけではなく、全体を見て判断 ・表情だけではわからないことが多いので、もっと情報集めよう
・心の状態が悪い時は、相手の気持ちを悪くとらえすぎる傾向があることを知っておこう
・相手のふるまいでイライラしたときは、「なぜそんなことをするのか」という推測を二つ以上考えてみよう
語句説明
「心の理論」…共感性、相手の行動の意図を察する力
「感情的な証拠」…物的なものではなく自分の抱いた感情が証拠のように思ってしまうこと
いかがでしたか?
社会生活の中で一番のストレスは対人関係です。
できるだけストレスを抱え込まないためにも、自分の共感性の精度を上げてトラブルを防いでいきたいです。
参考 メタ認知トレーニング+ ユニット7 相手の気持ちを理解する