「考えて行動しなさい!」と注意されたことありませんか?
この「考えて」という部分、これは遂行機能の働きによるものです。
今回は、神経認知機能の王様・遂行機能についてお話しします。
遂行機能は問題解決能力ともいわれています。
大きな問題から小さな問題まで、すべての問題を解決する場面で遂行機能が使われています。
たとえば、約束の時間に間に合うように準備する事、これも解決しなければならない問題のひとつです。
さあ一緒に遂行機能の働きをみていきましょう。
目次
認知機能の王様・遂行機能の特徴を知ろう
遂行機能は問題を解決するときに使われる認知機能です。
日常生活の問題とはどんなことがあるのでしょうか?
どんな場面で遂行機能は働いているのでしょうか?
遂行機能が活躍している場面例
・約束の時間に間に合わせる
・計画的にテスト勉強をする
・デートを成功させる
・家事をこなす
・仕事
homareko
こうやってみてみると、私たちの生活ではなにをするにも遂行機能が関わっていますね。
では、私たちは、どのように問題を解決しているのでしょうか?
遂行機能の働きについてもう少し詳しく見ていきましょう。
問題を解決するときに使うおもな機能を紹介します。
① 計画性・順序だて 物事の順序をくみたて計画する力
計画には、見通しを立てる力が必要になってきます。どのように取りくんだら要領よく問題が解決できるか優先順位を考える力も必要です。
(例:この順番で進めていこう)
② 推察 物事がどのようになるか想像する力
失敗をくり返さないために予想する力でもあります。
(例:こうなるかもしれないから、こうしよう)
③ 判断 迷ったときに決断する力
どっちが得かな?どっちがいいかな?などの判断をする力です。
(例:どっちにしようか?こっちにしよう)
④ 柔軟性 ふたつの概念、課題、または応答のきまりの間を変換する能力
正しいと思っても間違っていることがあります。そのような時に自分の考えを違う考え方にシフトする力です。
(例:間違えた…。今度はこのやり方に変えてやってみよう)
⑤ 抑制 正しい行動をするために必要な我慢ができる力
(例:今優先にしなくてはいけないのはこっちだ。こっちをやろう)
言葉での説明では、すこしイメージが難しいかもしれないので
これら遂行機能の5つの能力が使われている場面を日常生活の例をみながら、照らし合わせてみます。
たとえば
①約束の時間に間に合わせるときは、 間に合うように計画を立てますね。
見通しや準備にとりくむ順番を考えます。
②迷ったり、電車が遅れたりすることがないか予想します。
もし問題がおこりそうなら、それを解決するための時間もいれて考えなくてはいけません。
③そして、どの方法で行くのがいいか検討しますね。
④電車が遅延したら、ちがう方法で行かないといけません。
⑤途中、面白そうなことがあって立ち止まったら約束の待ち合わせ時間に間に合いません。ここは我慢して約束の場所にむかいます。
いかがですか?
これが遂行機能の問題解決能力です。
「問題を解決するために考える」ことは、脳の前頭前野という部分で行われています。
遂行機能は神経認知期機能をフル活用
次の図をみてみましょう。
これは、高次機能障害の教科書によくでてくるRask研究所の神経ピラミッドです。
遂行機能が神経認知機能の中で一番上に位置しています。
「問題を解決するために考える」とき、ポイントをつかむための注意機能、過去の記憶と照らし合わせるために必要な記憶機能、相談するときに使う流暢性、作業を行うための処理機能と、神経認知機能をフル活用します。
そのため、遂行機能は神経認知機能のなかで高次に位置し王様として君臨しているのです。
遂行機能が悪い代表的な病気
遂行機能の低下は、認知症でも、統合失調症でも、うつ病でもあります。
発達の問題がある場合、神経認知機能はかたよりがあり遂行機能の低下が生じます。
高次機能障害、外傷性障害、てんかんなどにも、もちろんあります。
遂行機能が悪い人の支援ポイント
考えて行動すること、問題を解決するために考えることは、大人にとって当たり前のことかもしれません。
しかし、その必要性を話しても興味が持てない人(子ども)もたくさんいます。
失敗をカミガミ責めても同じ失敗をくり返さなくなることにはつながりません。
失敗をくり返してしまうのは、問題をどのように考えればいいかわからないからです。
どのように考えていけばいいかを少しずつ身につけていくことで、自分で失敗をくり返さないように行動することができるようになります。
それでは、問題解決のテクニックを身につけていきましょう。
このテクニックを6か条に分けてみました。
これに沿って問題を解決していきましょう。その中で失敗はどの段階でおこりやすいか?がポイントになってきます。
第1条 目的・目標をはっきりさせよう
問題解決のゴールをはっきりさせましょう。
声かけの例
〇 「その問題をどうしたい?」
× 「△△しなくちゃダメでしょ」
第2条 情報を集めよう
問題を解決するために、もっと情報を集めましょう。
声かけの例
〇 「あいまいな情報や誰かから聞いた情報などは、もう一度確認をしよう」「正確な情報を調べなおしてみよう」
× 「情報をうのみしない」
必要な力:整理整頓する力、調べたものや書類などを整理して管理する力
第3条 どんな方法がうまくいくか考える
問題の解決方法をたくさん考えてどれがうまくいくか考えましょう。
声かけの例
〇 「どんな方法があるかな?」
× 「△△すればいいでしょ」
必要な力:優先順位を考える力、時間の管理、自分がやりたいこととやるべきことの折り合いをつける力、うまくいくかいかないかを想像する力
第4条 計画をたてる
方法が決まったらゴールまでの計画をたてましょう。
声かけの例
〇 「どれからやっていったらうまくいくだろう?やることを書き出して順番をきめよう。」「その計画で時間は間に合うかなあ?」
× 「さっさとやりなさい」
必要な力:実現可能な計画を立てる力(プランニング)、優先順位を考える力、とりかかる順番を決める力
第5条 やってみる
実際に体をうごかして、計画をやってみます。
声かけの例
〇 「ここまで考えたから、失敗してもいいからやってみたら?」
× 「△△しなさい」
必要な力:あまり気が向かない時も、やるべきことに取り組む力、継続する力、気分をうまくコントロールする力、誘惑に負けない力、困ったときはSOSを出す力
第6条 行動確認(モニタリング)
やってみたあとは、振り返ってみましょう。確認のしどころが意識できると同じ失敗をくりかえさないようになります。
声かけの例
〇 「どうだった?うまくいかなかった原因はなんだったんだろう?」「もう一回やってみる?」
× 「何度言ったらわかるの?」「失敗ばかりして」
必要な力:やり忘れがないか確認する力、うまくいかない時は方法をかえて再度チャレンジする力(柔軟性、シフティング)
日常生活にいかしていくためには、「あの時と同じようにやってみたら?」「あの時はどんなことに注意しながらやってみたんだったっけ?」など般化していくことが大切です。
つまづいた段階に必要な力が足りないかもしれません。
その部分を強化するようにしましょう。
おすすめ認知機能リハソフト
病院で行われている神経認知機能リハビリでは、コンピューターソフトを使って遂行機能の改善を図っています。
ゲームをしながら、見通しをたてて取り組む力、間違えたときに考えを見直す力、予想する力などを養います。
実際の課題は、こんな感じです。
どのような順番ですすめばゴールにいけるか、予想しながら見通しをたてて取り組んでいきます。うまくいかなかったら、どこからやりなおせばいいか、どこが間違っていたかを考え修正します。
先ほどの問題の答えはこちら↓
リハビリでは、自分に合ったゲームの難易度を選んで取り組みます。
楽しみながら遂行機能をきたえることができるようになっています。
難しく感じた部分は、工夫や方略を練って取り組むことで遂行機能が向上していきます。
おすすめ認知機能リハソフト課題
おすすめゲームはこちらです↓
ゲームソフト名 | 課題 |
高次脳機能バランサー | 「記号算」 「バラバラ漢字」「宝さがし」「迷子探し」 「図形シルエット」「条件迷路」「ルート99」「ステップ」 「小銭王」「ジャストフィット」「鏡像」「視点」 |
こども脳機能バランサー | 「くるま」「りったいフィット」「ジャストフィット」 「わたしはだれ?」「ブロック」「さめがめ」 |
計算力ゲーム | 「財布を守れ」 |
賢者の幸福脳 | 「ハノイの塔」「バスケットボールインニューヨーク」 「ジャストブロック」 |
智者の幸福脳 | 「ノートルダムの鐘」 |
コナンIQ | 「ブロックメーカー」「ナンバーブランク」「推理File」 |
Let’s脳リフレッシュ! | 「フラッシュ ピッ!」 |
・インターネットで入手しやすいソフトの紹介です
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今日のポイント
・遂行機能はすべての認知機能の王様
・「考えて行動しなさい」の「考えて」の部分が遂行機能
・問題を解決するときは、計画だて、優先順位づけ、予想、判断、柔軟に方法を変えてみる、我慢が大切
・失敗を責めるのではなく、考える方法を支援する
今回は、認知機能の中の王様、遂行機能についてくわしく説明してみました。
問題解決能力は日常生活で常に使われています。
うまく遂行機能を働かせていくことは問題解決上手、生活上手といえますね。
homareko
育児にもいかせそうですね。
参考図書
・精神疾患と認知機能
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・実行機能力ステップアップワークシート
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