今回は、生活や学習に密接に関連している作業記憶について詳しく説明したいと思います。
作業記憶は、別名ワーキングメモリとも呼ばれています。
買い物に出かけて「あれ?何買いに来たんだっけ?」という経験は誰にも一度はありませんか?
これは作業記憶(ワーキングメモリ)の仕業です。
作業記憶は、学習効率にも影響があります。
「なぜできないの?」とイライラしたら、作業記憶大丈夫かしら?と疑ってみましょう。
目次
ワーキングメモリをチェックしてみよう
生活の中でどんな場面で作業記憶(ワーキングメモリ)がつかわれているかというと
作業記憶が使われている場面の例
・おつりの計算
・人と会話をする
・料理をする
・買い物をする
これら生活の様々な場面で作業記憶が必要です。
おつりの計算や暗算などは、数を頭の中に描きながら計算しなくてはならないです。
人と会話をする場面では、会話の内容を踏まえて理解しながら次の言葉を発しています。
また料理をする場面では、冷蔵庫にある材料と覚えている献立の中から組み合わせて決めています。
買い物の場面でも料理と似て、必要な物を思い出して考えて買い物しています。
では、ここであなたのワーキングメモリをチェックしてみましょう。
いかがですか?
チェックが多くついたらワーキングメモリがうまく働いていない可能性があります。
作業記憶(ワーキングメモリ)ってなんだ?
では、作業記憶(ワーキングメモリ)とはどんな機能なのかもう少し詳しく見ていきましょう。
作業記憶(ワーキングメモリ)は、目や耳からの情報を短期的に記憶し、自分の頭の中にある過去の記憶の情報と照らし合わせ、必要な情報を選択してアウトプットする作業台のようなものです。
パソコンで例えるならば、メモリですね。
なので「頭の黒板」「脳のノートパッド」などとも呼ばれています。
イラストにしてみると次のようになります。
作業記憶という作業台にのる情報は、次のようなものになります。
短期記憶(聴覚性・視覚性)(言語性・視空間性) 長期記憶 これらを作業台にのせて考えます。(①)
そして必要な情報を選択(②)して
アウトプット(③)します。
例えば、冷蔵庫の中身をおもいだし今夜の献立を作るという場合を考えてみましょう。
冷蔵庫を見ます。何があるか確認します。(視覚刺激)
① 何があったか見たものを作業記憶の作業台にのっけます。(視空間性短期記憶)同じような材料を使った献立の情報(長期記憶)が同じ作業台にのっけられます。
② 作業台の上では短期記憶情報と長期記憶情報を取捨選択します。
③ 今夜の献立がきまります。
作業記憶の作業台は、注意機能をはたらかせ注目すべきことに焦点をあてる、遂行機能をはたらかせ考える、処理機能をはたらかせ正確に処理するなど認知機能の中継点(ハブ)の役割をしています。
作業記憶は脳の前頭前野という部分で働いています。
作業記憶の容量が足りない場合は、作業台で作業をすることがなかなか難しくなります。
その場合の脳は、考えて処理することをあきらめて、長期記憶(覚えたり経験したこと)を引き出してそのまま使います。
状況に合わせた柔軟な対応はできませんが、正解に近い行動に結びつけることは可能となります。
作業記憶が悪い代表的な病気
学習障害や発達障害、統合失調症や認知症の始まりなどが挙げられます。
表症状(主症状と言っても良いですね)としてはどこにも書かれていないのですが、隠れ作業記憶の低下が伴って日常生活や学習の妨げになっています。
作業記憶が悪い人への支援ポイント
作業記憶のどの部分が苦手かをまずは見極めることからはじめましょう。
次のチャートを取り組んでみてください。
チェックしてみて、どの部分が苦手にあたりましたか?
支援のコツは、これらの項目ごとに問題として焦点を充てるのではなく、苦手な部分を得意な部分で補ってワーキングメモリを動かしていけるようにすることです。
またワーキングメモリには2つに大別されます。
それぞれの関わり方について書いてみますと
① 言語性ワーキングメモリが苦手な方
音声情報を覚えて考えることが苦手なので、 わからない言葉がでてきたら質問をしましょう。
言葉の意味がわかるとワーキングメモリの負荷が減り考えることができるようになります。
イメージで覚えていけるように写真やイラストをうまく利用しましょう。 言葉だけで考えるようにしないように、参考書などを選ぶ時もできるだけ図や写真がついているものが適しています。
状況ごとに5W1H(いつ、どこで、だれが、どうした)にわけて情報をまとめていくクセをつけていきましょう。
会話を整理する方法を身につけると考えやすくなります。
サポートする側は、言葉とイメージ(絵や写真)をペアで提供して理解する手助けが有効です。
② 視空間性ワーキングメモリが苦手な方
位置や形の情報を覚えて考えることが苦手なので、 部分にわけて覚える、単純化するなどして覚えるようにしましょう。
位置や形を覚える量を減らすことで考えやすくなります。
ポイントだけ覚えれば区別がつけられます。
位置や形を言葉におきかえて覚えるようにすることもいいと思います。
サポートする側は、色分けをする、マス目を使うなどして位置がバラバラに頭に入らないようにする手助けが有効です。
また、体の感覚を養うトレーニングをしましょう。
たとえば、線をつなぐゲームや箸で豆を運ぶなどのトレーニングは、正確に位置を把握する力が強くなり、ワーキングメモリが働きやすくなります。
おすすめ認知機能リハソフト
病院で行われている神経認知機能リハビリでは、コンピューターソフトを使って記憶機能の改善を図っています。
必要な情報を覚えて目的合わせて思い出す練習をします。
また、記憶機能を改善するために、注意機能をうまく働かせること、記憶をサポートする方略などを身につけていきます。
実際の課題は、こんな感じです。
カードが次々と表示されます。
前に出たカードの記号かどうか判断してYesかNoかで答えてください。
このゲームは前に出たカードを覚えておかなければ正解に結びつけることができません。
次々に表示されますのでスピードについていきながら記憶力を高めていきます。
どこに注意をむけて覚えていくか、覚えるために符号化したりイメージ化や言語化したりと工夫を加えていきます。
リハビリでは、自分に合ったゲームの難易度を選んで取り組み、楽しみながら記憶機能をきたえることができるようになっています。
おすすめ認知機能リハソフト課題
・Let’s脳リフレッシュ! スパーク!目ヂカラ ハッスルMemory
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・高次脳機能バランサー フラッシュライト シリアル7 カード記憶
・賢者の幸福脳 世界旅紀行 紋タージュ
・智者の幸福脳 記憶の断片 エキゾチック・グリフ
・コナンIQ パターンパターン
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・計算力ゲーム かんたん計算 100問計算 合計計算 小銭計算
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今日のポイント
・作業記憶は、作業台の役目
・目や耳からの情報の短期記憶と脳にある長期記憶が作業台にのっけられ処理される
・作業記憶の性能が学習効率や仕事効率に影響
・言葉で覚えるのが得意?イメージで覚えるのが得意?
・作業記憶をうまく働かせるには得意分野でカバー
今回は、記憶機能の中でも最重要機能に君臨している作業記憶についてくわしく説明してみました。
見たり聞いたりしてもぱっと答えがわからないという気持ちになったら、作業記憶の低下を疑いましょう。
作業記憶はゲームなどできたえることが可能です。
また、カラオケで歌詞をみないで歌ってみる、読書、映画を楽しむなどは作業記憶がきたえられます。
そして、その感想などを誰かにお話ししてみましょう。
さらに作業記憶がきたえられます。
参考図書
・精神疾患と認知機能
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・ワーキングメモリを活かす効果的な学習支援
・高次脳機能障害・発達障害・認知症のための邪道な地域支援要請講座
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