神経認知機能リハビリには、いろいろな種類があります。
日本で取り組まれているリハビリの代表格は、NEARとVCAT-Jです。 ※VCAT-J Vocational Cognitive Ability Training by Jcores
※NEAR -神経認知機能リハビリ「NEAR」を知ろう! 【認知機能リハビリ説明編】
施設によって取り組んでいるプログラムが違うので、今回はもうひとつの代表格VCAT-Jを説明したいと思います。
目次
- VCAT-Jってどんなプログラム?
- どんな人が対象なの?
- 具体的にどんなことするの?
- コンピューターセッションってどんな感じ?
- 言語セッションってどんな感じ?
- 認知機能リハビリをするとこんな効果があります!
VCAT-Jってどんなプログラム?
精神疾患を患うと認知機能が低下します。
特に統合失調症では、遂行機能、運動速度(処理速度)、流暢性、記憶機能などが認知症と同レベルまで下がるといわれています。
※各機能の説明はこちら -認知機能紹介(神経認知)–
幻覚や妄想など主な症状がお薬でよくなった後も、これらの認知機能低下が残ってしまいます。
このような認知機能の低下が原因で、見た目は普通、病気もよくなったと思っている患者さんの中にもなかなか社会復帰ができず苦しんでいる方がたくさんいます。
怠けていたり、さぼっていたりしているわけではありません。
認知機能の低下はお薬ではよくならないためです。
現時点で、認知機能の低下を改善するのに有効な治療方法はリハビリのみです。
VCAT-Jは、就労を目的とした認知機能リハビリトレーニングプログラムです。 *神経認知機能についてはこちら→認知機能紹介(神経認知)
*認知機能の自己評価はこちら→あなたの認知機能は大丈夫?認知機能を自己評価してみましょう。
どんな人が対象なの?
VCAT-Jがおすすめの方は以下のとおりです。
VCAT-Jに取り組める施設は、徐々に広がっています。
現在、認知機能リハビリをおこなっている施設は、病院、デイケア、就労支援、リワークなどです。
具体的にどんなことするの?
VCAT-Jは、Jcoresというトレーニングソフトを使ってコンピューターで認知機能をきたえ、言語グループでのセッションを通してゲームと日常生活との橋渡し(ブリッジング)が行われます。
1クール3か月間です。
週2回60分のコンピューターゲームのトレーニングを行います。
言語グループセッションは、週1回60分です。じっくり3か月間は認知機能の改善にとりくんでいきましょう。
コンピューターセッションってどんな感じ?
Jcoresは、ドイツで開発された認知機能リハビリ用ソフトをもとに現在のコンピューター環境に合わせて日本語版に開発されたゲームソフトです。
市販はされてなく、特別な講習を受けたスタッフが各施設でプログラム使用できることになっています。
※Med IT Techでの紹介記事はこちら
統合失調症の方が低下しやすい認知機能にターゲットをあてたゲームソフト内容になっています。
ゲームのやり方などがわからないときはマニュアルなどを読んで理解してもらいます。
取り組み方やうまくやるコツを自分なりに見つけ出していく力もリハビリを通してきたえていきます。
ほかのメンバーとのゲーム戦略を話し合ったり、意見を参考にしながらゲームがうまくなれるようにしていきましょう。
VCAT-Jでは、毎回のセッションで取り組むゲーム課題が決められています。
まんべんなくいろいろな認知機能をターゲットにした課題に取り組んでいくことで全体の認知機能が向上していきます。
言語セッションってどんな感じ?
言語セッションでは、ゲームの結果をふりかえり自分の認知機能の特徴を知ることが大切です。
だれでも、得意な分野と不得意な分野の認知機能の特徴があります。
不得意な分野のゲームは、戦略をほかのメンバーから教えてもらったり、日常生活でもいろいろな工夫をしていくことで補っていくことを考えたりします。
また、どんな時に認知機能が働きにくくなるかなどセルフモニタリングをおこない、うまく働かない時の対処方法などを話し合います。
就労の場面やデイケアなどで想定される状況をとりあげ、コンピューターセッションの場面と日常生活の場面との関連性を確認し、応用していく力をサポートします。
認知機能リハビリをするとこんな効果があります!
最後に、認知機能リハビリの効果をお伝えします。
認知機能の状態は検査でわかります。
主に病院で行われている検査は、BACS-J、北大式認知機能検査などです。
ほかにもタブレットで検査できるものもあり、徐々に検査が簡単にできるようになってきました。
これらの検査で効果を確認することができます。
しかし、検査だけがよくなっても実際の生活の変化がなければ台無しです。
VCAT-Jのプログラムを終えて、日常生活の中で認知機能の回復を実感されている患者さんの声がたくさんあります。
あきらめていた自己実現も認知機能をきたえることでリカバリーできる可能性があります。
ぜひ、多くの方に取り組んでいってもらいたいと思います。
私自身も定期的にこのソフトや似たようなスマホアプリなどを使って訓練しています。
大体3カ月程経ちますが、そのおかげか「ついうっかり」や「忘れ物」が減ったりなど、認知機能の向上を感じるようになりました。
認知機能の向上は生活の質を上げる事にも繋がります。
他にも今後、これらの認知機能リハビリテーションそのものに診療報酬がつく時代も来ます。
これからの時代のニーズに合わせて、情報発信を続けていきたいと思っています。
良かったらまたご覧くださいませm(_ _)m
引用参考
・VCAT-J →HPはこちら
スタッフおすすめ本
・IPSブックレット3
・私のリカバリーストーリー~リカバリーと働くこと~
・リカバリーのためのワークブック: 回復を目指す精神科サポートガイド