これまで様々な認知機能についてブログの中でとりあげてきました。
しかし、もうひとつ大切な脳の働きがあります。
それは「メタ認知」です。
「メタ認知」の働きは、私たちが対人関係や社会生活をうまく送るためにとても大切な働きをしています。
認知機能リハビリの中でも大切な要素であり、メタ認知トレーニングといった単独のリハビリプログラムが確立しています。
今回は、メタ認知についてわかりやすく説明します。
目次
メタ認知とは?
人間それぞれ行動の癖(くせ)があります。
みんなそれぞれが「なんとなくやってしまう」行動の事です。
私自身もついついやってしまう行動の癖の一つとしては、就寝前に歯磨きをしているのに、つい間食をしてしまいもう一度歯磨きをする事が多いです(^_^;)
この様に、つい無意識で行動してしまうのが「癖」です。
人間は意識していなくても考えて決断してから行動に移しているので行動の癖は考え方の癖といいかえることができます。
※詳しくはこちらの記事で→精神科医が説明する認知機能講座【精神科病院スタッフ向け】
自分自身の考え方の癖に気づくことを「メタ認知」といいます。
認知機能のイラストにあらわすと「メタ認知」は下記のようになります。
メタ認知は「認知を認知する」「知っていることを知っている」などと言われたりします。
難しいです…でも「分からない事を自覚した」事もメタ認知ですか?
看護師さん
homareko
よく気付きました。そういった自己の気付きがメタ認知です。
自分自身がとった行動は、自分のどんな知識や感情・経験などから来た事なのか?
自分自身を客観的に見る事。これがメタ認知です。
そのメタ認知を図にしてみました。ご覧ください。
だれもが焦ったり不安だったりピンチの時は冷静になれず自分のクセが出やすくなります。
クセによって間違った思い込みや勘違いにつながってしまうことが多いです。
その結果、対人関係トラブルにつながってしまうということが少なくありません。
先生、プロセスレコードも一種のメタ認知でしょうか?
看護師さん
homareko
はい。その通りです。
※参考例-看護における「プロセスレコード」の目的と書き方・記入例 – ジョブデポ
自分の思い込みから勘違いやトラブルにならないようにしたいですね
看護師さん
homareko
セルフモニタリングの力って社会に暮らしていくためにとても重要です
考え方の癖ってどんな癖があるの?
考え方の癖って個性ともいえます。
個性は悪いものではありません。
メタ認知の力をつけて、自分の個性や癖を知ることが大切です。
思い込みや勘違いに陥りやすい場面で冷静に考え直す癖を身につければトラブルや過剰なストレスを回避することができます。
考え方の癖や思い込みやすい傾向などには特徴があり、例を挙げると
代表的な考えの癖
① 「失敗の原因は○○のせいだ」と決めつける癖(原因帰属)
② 早とちりしやすい癖(結論への飛躍)
③ 記憶に頼る癖(記憶)
④ 第一印象できめつける癖(初頭効果)
この4つが挙がります。これらの特徴を一つずつ説明していきたいと思います。
①「失敗の原因は○○のせいだ」と決めつける癖(原因帰属)
何か失敗した時を思い出してみてください。
あなたは何が原因と考えますか?あまり深く考えないで一番最初に思い浮かんだことが、あなたの考え方の癖です。
大きく分けると3つのパターンがあります。
・自分のせいだと考えやすいタイプ
・他人のせいと考えやすいタイプ
・環境が悪い(または運がわるい)
たとえば、こんな場面を考えてみましょう。
どのタイプがいいとか悪いとかではありません。
失敗や問題にはいくつかの原因が重なっておこるものです。
最初に考えた原因に加えて、他の原因もあるかも?と考えることが大切です。
たとえば、自分が悪かったかもしれないけど、あの環境では仕方ないとかんがえることができれば、「どんどん自分を責め続けてしまう」ことを避けることができます。
このようにいくつかの原因を組み合わせて考えるとストレスをためこまない考え方ができます
②早とちりしやすい癖(結論への飛躍)
あなたは、決断が早い方ですか?
決断が早いことは良い癖でもありますが、早とちりしやすい癖でもあります。
見たり、聞いたりした情報を自分の記憶や経験から「要するとこういった事か」「きっとそうに違いない」と決めつけてしまう傾向があります。
この癖が強いタイプは、勘違いで失敗をしやすいタイプです。
思い込みが強いと
「(勘違いしたまま)周囲に意見を言う」
「(勘違いしたまま)不満に感じる」
「(勘違いしたまま)落ち込む」
など心が穏やかでない状態になりやすいです。
わずかな情報で判断したことは間違うことが多いということに気づいておくことが大切です。
そうすれば、決断を先送りする・あいまいな情報を信じないなどの行動につなげることができ、正確に判断することができます。
勘違いでイライラすることなどは少なくなりますね。
③記憶を頼る癖(記憶)
自分が経験したことの記憶は間違っていないと確信するクセがあります。
しかし、過信しすぎるとトラブルメーカーになりやすいのが記憶のクセです。
なぜならば、記憶は頼りにならないという特徴があるからです。
記憶そのものの特徴をみていきましょう。
記憶の特徴
・自分の覚えたいように記憶されるという特徴がある
・本当は起きていないことが「起きた」と記憶されることがある(記憶錯誤)
・記憶は関連した出来事や理屈で付け加えられていく特徴がある
このような特徴があるため、記憶そのものが間違った記憶になってしまっていることが多いのです。
そもそも頼りにならない記憶ですが、ストレスが多い状況では特に間違った記憶と本当の記憶の区別がつきにくくなります。
自分の記憶も頼りにならないし、相手の記憶も頼りにならないことを知っておくことは大切です。
記憶違いのまま判断することは危険です。
まず、記憶が間違っているかもしれないと考えること、他の情報はないかと探ってみる癖をつけましょう。
④第一印象できめつける癖(初頭効果)
「対人関係の80%は第一印象できまる」
「第一印象が一番大切」
といわれているように、人は第一印象にこだわる傾向があります。
誰でも第一印象で決めつけるクセはもっています。
しかし、一度受けた印象も次第に印象が変わっていくことってありますよね。
柔軟にとらえ方を変化させることができないと、知らず知らずのうちに、偏見をもちやすかったり、少ない情報で全部を見た気になったりします。
本当は違うのに勘違いをしたまま対人関係を続けてもいい関係性ができません。
「第一印象はひとをだますもの」というぐらいの気持ちで、柔軟に印象を変えていく癖をつけましょう。
自分の癖にひっかからないようにしたい!メタ認知トレーニングのすすめ
ここまで、考え方の癖についていろいろあることを学びました。
いかがですか?自分に当てはまるクセがあったでしょうか?
では、どうしたら自分の癖にひっかからないようにできるのでしょうか。
メタ認知トレーニングより簡単なチェック方法をご紹介します。
何か問題がおきたとき、失敗したときには、次の「自分に対する3つの質問」をチェックしてみましょう
たとえば、もしあなたが「嫌われている」と感じたら?
「証拠はあるか?どうやってわかったか?」と自分に質問してみてください。
「うわさで聞いたから」といっても事実かどうかわかりません。
客観的に考えることが難しい時は、信頼している人に聞いてみるのもいいでしょう。
そして、感情的に反応をすることで後々に損な事にならないか考えてみましょう。
行動を起こす前に、メタ認知チェックをするクセをつけるといいですね。
今日のポイント
・自分の考えに気づくことがメタ認知
・考え方にはだれでも癖がある
・考え方の癖が強すぎると思い込みにつながってしまう
・癖に引っかからないようにメタ認知を働かせることが大切
参考文献
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参考文献 メタ認知トレーニング(MCT)の理論と実践 石垣琢磨
自分の考えに気づくことは、「わからないことがわかる」ということです。
メタ認知が働かないと、対人関係の中ではトラブルメーカーになりやすかったり、自分自身でストレスフルな生活にしてしまったり、病気を病気とわからなかったりします。
「自分の癖を見つめ直す」癖がつく事が一番良い事ですね。