なにかを人にやってもらうとき、気持ちよく取り組んでほしいですよね。
そして気持ちよく取り組むためには、やる気が必要です。
今回の記事は前回の記事の続きです。
心理学の方面からやる気スイッチ(動機づけ)をもう少し詳しく解明していきたいと思います。
※前回記事:精神科医のわたしが心理学を使って、やる気スイッチ(動機づけ)のしくみをわかりやすく説明します。
「やる気スイッチ」は「動機づけ」の事です。
まず初めに「やる気スイッチ」は心理学的には「動機づけ」といわれ、古くから研究されてきました。
動機づけの種類は、自分がやりたいと思う気持ちの大きさにより分類されています。
人をやる気にさせるための働きかけには、いろいろありますが、一番多く使われるのは、いわゆる「目の前にニンジンをぶらさげること」(外発的動機付け)です。
しかし、ほんとうに自分からすすんでやるようになるには、内発的動機付けが必要となってきます。
この動機付けに関しては前回の記事でも説明していますので、分からない時は見直して見てください。
※前回の記事リンク
タイプ別やる気目標
あなたの目の前にいる動かない人を想像してみてください。
歯みがきをしない患者さん、勉強をしない息子ども、仕事をしない同僚などなど。
では、あなたの困ったさんへの動機付けはどんなタイプのものがヒットするのでしょうか。
homareko
ここで動機づけの種類がどんなものがあったか復習してみましょう。
「やる気スイッチ」の種類
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homareko
大きく簡単に分けるとこの3つのパターンになります。
この様にひとは、ご褒美や報酬をもらうこと、罰をうけないようにすることに興味関心が高いタイプと、自分の関心や価値に基づいて行動するタイプにわかれます。
この2つのタイプを因果志向性理論(causality orientations theory)で唱えています。
※参考-(用語集)内発的動機づけ・自己決定理論 – 溝上 慎一
簡単な因果指向性理論のポイント
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このタイプ別に、何がきっかけになるのか?そのメリットは何か?と相手にアプローチしていくことが効果的です。
ちょっと聞こえが悪いですが、
1、興味関心がどの部分にむいているかを観察する。
2、それに合ったぶら下げるニンジンを選択してあげる
この過程がその人のやる気スイッチを入りやすくなるということです。
そしてタイプ別に有効なアプローチ例としてはこの図で説明します。
統制的志向性タイプの人には、名声やお金・経済的成功・見栄えを目標にかかげるとヒットしやすくなります。
自律的志向性には、地域への貢献・健康・人格的成長・交友関係などの目標がヒットしやすいです。
患者さんのやる気スイッチがなかなかみつからないことはよくあります。
これは病気によって意欲が低下していたり、うまくいく見通しが立ちづらくなっている事が原因です。
世界観として「楽しいことかどうかわからない」「やっても結果に結びつくとは思えない」といった状態の方が多いからです。(これが非動機づけです)
なので患者さんのタイプを観察し、動きやすそうな「ニンジン」を示してあげることはやる気のきっかけになります。
以前の記事にも出た「動機づけのいろいろ」を基に観察してみてください
※精神科医のわたしが心理学を使って、やる気スイッチ(動機づけ)のしくみをわかりやすく説明します
患者さんのやる気スイッチが入っていない段階では、患者さん自身がすすんで行動することはありません。
まずはがっかりしないで、とりくんでもらうことです。
「できそう」「役に立ちそう」「褒められた」「楽しかった」など取り組んだ後の反応をみて、自分で進んでやる気持ちが大きくなる方向の動機を少しずつあげていくことです。
きっかけはよこしまでも、最終的には「楽しい」「やりたいな」「(活動そのものに)興味がある」と感じ、やる気スイッチを自分で押して自分からすすんで取り組み続けられたら、本人も周りも幸せですね。
やる気スイッチを発動させるには
誰でもできそうな事だったら頑張ることはできますが、難しそうなことには頑張ることができません。
これは「やる気スイッチ」が刺激されても、行動に移す為にはもう一つハードルがあるからです。
それは何かと言うと行動にいたるまでに、自己効力感(self-efficacy)があるかどうかを考えるからです。
簡単に例を挙げると、「自分がちゃんとできるだろうか」「できそうか」という見通しですね。
行動することによってもたらされる良い結果が「やる気スイッチ」としても、できそうだという気持ちがなければ、やる気スイッチは発動しません。
目標(期待する結果つまり「やる気スイッチ」)は自分(相手)ができそうなぐらいを設定することが重要ですね。
なので、その行動が取り組めたときは、大いに肯定的なフィードバックをしましょう。
リハビリの現場では、看護師さんが「よく来てくれたね」「うれしいわ」と声掛けしてくれています。
これが自己効力感を高める事にとても良い影響があります。
トレーニングの目的は認知機能をあげることですが、まずはただプログラムに参加する事や見学に来る事でも良いんです。
その患者さんにとって「出来た」事をフィードバックする事で「またやろう」という気持ちにつながっています。
続けてもらう事で徐々に「役に立ちそう」「興味がでた」「楽しい」といった期待する結果をあげていくことが可能になります。
私自身も北海道でこの過程を学んできました。
※【必見】北の聖地・北海道が教えてくれたリハビリ現場の課題の4つの解決方法
やる気スイッチを満たす3拍子
最後に、やる気スイッチを見直してみましょう。
「やりたい」と思っても、周囲に認められないことだったり、うまくいくはずがないなと自信がもてなかったら、行動にはつながりません。
自分が考えたことが成功に結びついていく過程がやる気にさせるのです。
やる気スイッチの3要素
・自律性autonomy
自分自身で「やるorやらない」「方法」が選択ができるようになっていますか?本人が考えたことが成功や結果につながるものになっていますか?
・有能感competence
自分にも社会に対しても効果がありそうだという自信をもてていますか?
「できそうだ」と思えていますか?
・関係性relatedness
そのことは社会と筋が通った関係ですか?
自分のためだけでなく、誰かのためでもあるという欲求は誰にでもあります。
これらのことを満たしていくことができているかどうか、やる気スイッチのチェックをしてみてください。
これが基本的心理欲求理論(basic psychological needs theory)を使ったアプローチになります。
※参考:内発的動機づけ・自己決定理論
今日のポイント
・やる気スイッチは、タイプ別に選ぶとヒットしやすい
・やる気スイッチを発動させるには、「できそうだ」と思えるようにすることが大事
・人の基本的な欲求は皆同じ。欲求を満たすやる気スイッチになっているかチェックしよう
やる気スイッチを刺激するポイントに関していかがでしたか。
これは誰かのやる気を引き出そうという場面だけでなく、自分自身のやる気スイッチを刺激する事も出来ます。
ダラダラしてしまい、めんどくさい(ヾノ・∀・`)ムリムリという事柄を、気持ちよく取り組むためには、自分自身の目標を下げながら、その活動そのものに興味関心をもつことがポイントです。
他人を動かす時はこういった気持ちにも焦点をあてて関わる事がとても重要な事なのです。